その日から半年ぐらいした辺りに、また呼び出されていきました。
すると以前見たホスト風の男と、派手な格好した女がいました。
坊主頭が言うには、女を担保にして金を借りにきたんだという。
「ホントに大丈夫か?払えるの?」
書類を渡しに近寄ると、常務が女にそう尋ねてました。
女の顔を見てドキっとしました。
そうとうな美人だったんです。
化粧はしてるだろうけど、あんな美人にはそう遭遇しない。
「大丈夫です」と女はきっぱり答えてた。
「稼ぎはどのくらい?」
「1千以上はありますから大丈夫です」
「へぇ~売れっ子なんだなぁ~、あっ、もうイイよ、ご苦労さん」
僕に振り返りそう言ってきたので、僕はそそくさと退場しました。
事務所を出る時「あのキャバ嬢もうダメだなww」と坊主頭がニヤニヤしながら言ってた。
「何でですか?」真面目に聞いてみた。
「だってよぉ~返せる額じゃね~べw」
「そうなんですか?」
「ありゃ~AVか風呂だなw」
「風呂?」
「ソープだよ、ソープw」
うはぁ~って力が抜けそうになりました。
まさか自分がそんな世界に足を踏み入れるなんて。
エレベーターに乗った瞬間、足がガクガクしたのを覚えてます。
1カ月後、常務から電話が入りました。
「今夜お前運転してくれ」
誰にも言うなと忠告してくれた営業にキーを渡され、またベンツを取りに行きました。
その日向かった先は六本木でした。
接待かと思いきやそうではなく、なんとあの日ビルにいた女がいる店だったんです。
ここで突然「これからはこいつが担当になるからよろしくな」という話になりました。
意味が分からぬままその日から僕が集金の担当になっちゃったんです。
帰りの車で言われましたが、キャバ嬢には法定金利で借金をさせているという。
だから安心して受け取りに行けと言われました。
ホストへは法外な利息で貸しているようです。
キャバ嬢への集金は2週に1回。
事務所に来てもらうわけにはいかないので、僕がキャバ嬢の自宅へと取りに行きました。
まさか喫茶店などで受け取って、札束を数えるなんてできません。
数万とかの可愛い借金ではないので、数えるのにも緊張する額です。
キャバ嬢は都心部の高級な高層マンションに住んでました。
10畳はあろうかというリビングに通され、お札を数えて確認する。
ほぼスッピンに見えるキャバ嬢の美しさに目を奪われつつも、数える事に没頭しました。
キャバ嬢は毎回ラフな部屋着でした。
体にピタッと貼り付くタイトなジャージみたいな姿や、ホットパンツにTシャツなど。
女っ気のない僕にはドキドキの姿でした。
1回目、2回目、と回数を重ねて行くうちに、キャバ嬢は喋り掛けてくるようになった。
「アナタ○○商事の人じゃないんでしょ?」
「はい、○○○の人間です」
「まっとうなサラリーマンてわけね」
「そうですね、あの人達とは関わりないので」
初めはそんな会話から始まりました。
馴れてくると借金の話になり、あのホストの肩代わりをしている話をしてました。
「何でそこまでするんですか?」
「だってあたし達の夢だもん」
「店を維持する事が?」
「そう。軌道に乗ったら結婚するの」
「はぁ、そうなんですか。」
騙されてるだけじゃん!なんて言える空気じゃありません。
このキャバ嬢は北海道出身のようで、スカウトされて上京したという。
まだ2年目だけど北海道でもそうとう売れてたとか言ってた。
離婚した母親と高校生の妹が2人で北海道にいる。
妹が大学を卒業するまでは絶対に稼ぎまくるんだ!と息巻いてた。
順調に返済が進んでたのに、また借金の上乗せをする事になる。
常務に呼ばれて説明され、驚く額を貸し出す話を聞かされた。
1回の返済額は凄い事になってて、本当に大丈夫なのか心配になるほどです。
だから集金に行った時に忠告してあげました。
「夢だとしてもこれは行き過ぎじゃないか」って。
「ちょっと踏み外すと歯止めが効かなくなる額ですよ」って。
その頃には僕の事を少し信用してたようで、「分かってる、ありがとう」って言ってました。
ちょっと僕も恋心が芽生えちゃってた感じもありましたが、しっかり隠してました。
「アナタは絶対キャバクラとかハマっちゃダメよ」
「ハマりませんよw」
「アナタみたいな人がどっぷりハマるのよ」
「そうですかね?」
「だって彼女とかそんなにいなかったでしょ?」
「んまぁ~確かにいませんでしたねw」
「性欲はあり余ってるけど相手がいない、そうでしょ?w」
「分かります?恥ずかしいですねw」
集金に行ってそんなラフな会話をする間柄になってました。
だから胸を締め付けられるような思いになったんです。
まだ返済が半分ほど残ってた頃、ホストが飛びました。
連帯保証人になってたキャバ嬢が返済しなきゃいけない状況になります。
後になって分かったんですが、飛んだホストはしばらくして見つかったそうです。
そして売られたとかで、ある程度の額は返済したみたいです。
でもキャバ嬢には多額の借金が上乗せされました。
男に裏切られてなおかつ借金の上乗せで、キャバ嬢はどんよりするほど落ち込んでました。
集金に行くとクマができた顔をして、顔はゲンナリしてました。
元気出してスグ返しちゃいなって!と励ましてました。

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